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2025.05.19 税務コラム
法人を設立するなら会社形態は株式会社?合同会社?/税務コラム〜[vol.015]

これから法人を設立しようとしている方で、会社形態を株式会社と合同会社どちらにするか悩まれている方もいらっしゃると思います。小規模ビジネスの立ち上げ、フリーランスからの法人化、副業としての起業を検討している方にとって、株式会社と合同会社どちらを選ぶべきかでしょうか。
株式会社と合同会社のメリット・デメリット
株式会社 | 合同会社 | |
---|---|---|
メリット | ・商号の認知度が高く一般的 ・代表者は代表取締役であり、 認知度が高い ・株式を相続することが可能 | ・設立コストが安い ・任期による役員変更登記や 決算公告の維持コストが不要 ・出資者と経営者が同じで 意思決定が迅速 |
デメリット | ・設立コストが高い ・任期による役員変更登記や 決算公告の維持コストが必要 ・出資者と経営者が別で 意思決定が遅い | ・商号の認知度が低い ・代表者は代表社員であり、 認知度が低い ・(定款に規定しないと)払戻 請求権を金銭債権として相続 |
株式会社と合同会社のメリット、デメリットとしては、認知度の有無やコストの差について、とりあげられることが多いと思います。
一般的に、銀行融資や大手企業との取引を考えると、株式会社の方が社会的信用度は高いと言えます。
一方で、アメリカの大手IT企業であるGAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)等の日本法人は、軒並み合同会社の会社形態を採用しています。アメリカの親法人からの方針が、出資者を通して日本法人に反映されやすく、意思決定のスピードが理由として挙げられます。また、決算公告が不要であるということも理由ではないでしょうか。
しかし、合同会社のデメリットとして、出資持分の相続を考えていないケースがあるので注意が必要です。合同会社の出資者である社員が亡くなった場合には、その社員は合同会社を退社することになります。株式会社と異なり、定款に規定しない限り、相続人は社員の地位を承継することができません。相続人が社員の地位を引き継ぐことが決まっているのであれば、あらかじめ定款に記載しておいた方が良いでしょう。例えば、「社員が死亡した場合には、当該社員の相続人は当該社員の持分を承継して社員となることができる。」というように記載します。
株式会社と合同会社の設立数
株式会社と合同会社の設立数を参考に決めることもできます。ここ最近の株式会社と合同会社の設立された数の推移を見ていきましょう。
出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)「会社及び登記の種類別 会社の登記の件数」を基に作成
合同会社の設立数は年々増えており、2023年に4.1万社になります。株式会社の設立数も増えていますが、占有割合は合同会社の方が徐々に増えています。
合同会社を設立する際のコストが抑えられるということが、一番の理由であると考えられます。
株式会社と合同会社の設立コスト
メリット、デメリットでも挙がっている法人の設立コストについて具体的な金額を見ていきます。株式会社と合同会社とでは、およそ2,3倍の差があります。
株式会社 | 合同会社 | |
---|---|---|
①公証人の定款の認証手数料 | 1.5~5万円 | 不要 |
②登録免許税 | 15万円 | 6万円 |
③定款の収入印紙代 | 4万円(0.5万円) | 4万円(0.5万円) |
合計 | 20.5~24万円 (17~20.5万円) | 10万円 (6.5万円) |
※括弧書きは電子定款による場合のコスト
上記コストの他、司法書士に依頼される場合には、別途報酬費用が必要になります。ご自身で手続きを行うこともできなくはありませんが、手間や時間がかかりますし、思わぬ抜け漏れ等によって損害が生じるリスクもありますので、司法書士にお願いすることをおすすめします。
株式会社で公証人による定款の認証手数料に幅があるのは、資本金の金額によって異なってくるからです。
・資本金100万円未満:1.5万円、3万円
・資本金100万円以上300万円未満:4万円
・資本金300万円以上:5万円
株主が3人以下で、資本金が100万円未満の株式会社が、取締役会を設置しないのであれば、手数料を1.5万円まで抑えることができます。なお、取締役会を設置するには取締役が3人以上必要になってきます。
定款を紙面ではなく電子定款の作成を代行業者に依頼すると、印紙代は不要となり、代行業者への手数料5千円程度で済みます。
結局、株式会社と合同会社どちらを設立すればよいの?
小規模ビジネスの立ち上げ、フリーランスからの法人化、副業としての起業を考えて、会社を設立したい人は、まずは合同会社でスモールスタートを切るのも方法の一つです。一方で、大手企業との取引や銀行融資による資金調達等を重視して、設立後すぐにでも事業規模を拡大していきたい場合には、株式会社を選択した方がよいかもしれません。
株式会社と合同会社いずれの会社形態であっても、法人税の計算に影響はありませんので、税金面から考えるとどちらを選択しても良いと言えます。
また、会社形態は後からでも変更することができます。合同会社から株式会社、株式会社から合同会社に、会社形態を変更するコストは、以下の通り10万円程度で、司法書士に依頼される場合には、別途報酬費用が必要になります。
・登録免許税(解散):3万円
・登録免許税(設立):3万円
・官報公告費用:3~4万円

監修者プロフィール
川口 誠(カワグチ マコト)
国税局では高度な調査力が必要とされる調査部において、10年以上にわたって上場企業や外国法人等の税務調査に従事する。また、国税庁においては、全国の国税局にある調査部の監理・監督を行い、国税組織の事務運営にも携わる。
略歴
平成24~28年 東京国税局 調査第四部各調査部門、調査第一部調査管理課
平成29~30年 国税庁 調査査察部 調査課
令和元~5年 東京国税局 調査第一部 国際調査課、国際調査管理課、広域情報管理課
令和6年 ON税理士法人と業務提携
実績
中小企業から上場企業等まで100以上の会社の税務調査を行う。
メディア・著書
「元国税の不動産専門税理士が教える!不動産投資 節税の教科書」
資格・免許
税理士
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