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2025.05.20 税務コラム

法人の税務調査のスケジュールを知って税務調査に備える/税務コラム〜[vol.016]

税務調査

納税者にとっては税務行政の内情がわからず不安になることがあると思います。特に、税務調査の場面ではそう言えることが多いのでないでしょうか。これまで税務調査を受けたことがない法人のために税務調査の流れをご紹介します。

CONTENTS

法人の税務調査のスケジュール

法人の税務調査の一連の流れは以下の通りになります。


①税務調査の通知
②臨場調査
③反面調査・銀行調査
④調査審理
⑤調査結果の説明
⑥更正・修正申告


税務調査の期間(上記①~⑥までの期間)は、短くて1か月程度になります。②の臨場調査が問題なく終わると、それ以降はスムーズに終わり、最後に是認の通知書(更正決定等をすべきと認められない旨の通知)が送られることになります。税務署では1か月に1回、施行と呼ばれる処理を行うことによって、更正、加算税、是認の通知書が送付されることになりますので、最低でも1か月程度はかかります。


長い場合には、3か月あるいはそれを超える場合もあります。基本的には、事務年度(税務行政は事務年度7月1日~翌6月30日と呼ばれる期間で運営されており、人事異動は7月10日)内処理を心掛けていますが、②の臨場調査で問題があり、その解明に時間がかかるような場合には、事務年度をまたぎ、別の調査官が引き継ぐこともあります。


税務調査の通知

まずは、調査官から税務調査の連絡が来ます。確定申告書に税務代理権限書が添付され、「調査の通知」欄にチェックが入っていると税理士に対して通知されます。


ここで知っておいた方が良いことは、税務調査の通知には、似て非なる「調査通知」と「事前通知」があるということです。


「調査通知」が行われるとそれ以降、修正申告をすると加算税5%が課せられることになるため、最初に行われます。「事前通知」は税務調査を行うための手続き上の要件になり、日時等を含めて通知しないといけませんので、日程調整の後に行われます。したがって、通常は、調査通知→日程調整→事前通知といった流れになります。


調査官はチェックシートに基づいて調査通知を行っていますので、無いとは思いますが、最初の調査通知で3点について通知漏れがある場合には、事前通知までに修正申告をすると、加算税がかからないことになります。


調査通知
(国税通則法65⑥、
国税通則法施行令
27④)
事前通知
(国税通則法
74条の9、
国税通則法施行令
30条の4)
① 実地調査を行う旨
② 調査の対象となる税目
③ 調査の対象となる期間
① 実地調査を行う旨
② 実地調査を開始する日時
③ 調査を行う場所
④ 調査の目的
⑤ 調査の対象となる税目
⑥ 調査の対象となる期間
⑦ 調査の対象となる帳簿書類
その他の物件
⑧ 調査の相手方である納税義務者の氏名及び
住所又は居所
⑨ 調査を行う当該職員の氏名
及び所属官署
⑩ 日時や場所に掲げる事項の変更に
関する事項
⑪ 目的、税目、期間、書類物件に掲げる事項以外の事項について非違が疑われることとなった場合において質問検査等を行うことを妨げるものではない旨


臨場調査

臨場調査は、通常ですと2日程度で終わります。まずは、1日目の午前中に法人の概況聴取を行います。そして、1日目の午後から2日目にかけて帳簿調査を行います。2日目の夕方の最後に問題点の指摘を行います。


代表者の業務が忙しい場合には、最初の概況聴取や問題点指摘の際に立ち会い、帳簿調査では経理担当と税理士が対応することもあります。ただ、代表者は、調査官がどういった視点で調査をしているのかを知ることで今後の業務にも生かせますので、可能な限り立ち会っても良いかもしれません。帳簿調査を行っている場に代表者がいると調査官には何とも言えないプレッシャーがかかりますし、疑問点に対してすぐ回答することができますので帳簿調査がスムーズに行くと思います。


税務署には特別国税調査官と呼ばれる調査官がおり、比較的売上規模が大きい法人を対象として、1週間程度、臨場して調査することもあります。


反面調査・銀行(金融機関)調査

臨場調査が終わって、問題点を解明するために、取引先に反面調査を行うことがあります。取引先に取引内容を聴取するとともに、その取引に係る書類等を確認します。例えば、外注費に不審な点があれば、取引先に外注費に関する業務内容を聴取するとともに、取引先にある帳簿書類(更に下請けがあればそこからの請求書等)を確認し、外注費の適否を検討します。反面調査は納税者に事前に連絡せず行うことができます。


銀行(金融機関)では、例えば、外注費で送金されたお金がどのように流れているのかを確認します。送金された近い日の伝票を確認することで、そのお金が他の銀行に流れているのかどうかを把握することができます。また、ATMで引き出されている場合には、誰が行っているのかを特定することができませんので、不正等により確認の必要性が高ければATMの防犯カメラを確認することもあります。


調査事項の審理

調査官は臨場調査で把握した問題点を統括官に報告します。必要に応じて、反面調査や銀行調査によって問題点を解明するとともに、法令、通達に基づき、審理担当に相談しながら是正することができるかどうかを検討します。それほど是正金額が大きくなく、不正がないような問題点であれば、ある程度、調査官の判断によるところもあります。税務調査では白黒付かないようなグレーの問題も出てきます。そういった場合には、まずは調査官に納税者側の意見として交渉してみて、埒が明かないようなときは、統括官に交渉するのも一つの方法であると言えます。


是正金額や不正金額が大きい場合には、副署長、署長を含めて重要事案審議会を開催し、検討します。重要事案審議会では調査官の意見通りに行くことが大半ですが、中には覆ることもあります。


調査結果の内容の説明

調査終了の手続きとして、調査官からの調査結果の内容の説明があります。否認項目と金額とその理由になります。口頭で行われますが、調査官が作成した指摘事項一覧表を渡して説明することもあります。


確定申告書に税務代理権限書が添付され、「調査の終了の際の手続に関する同意」欄にチェックが入っていると、調査結果の内容の説明は税理士に対して行われます。


更正・修正申告

調査結果の内容の説明が終わると、修正申告の勧奨が行われます。修正申告をするか、税務署から更正を受けるかどうかは、納税者の任意の選択になります。更正の場合には、調査官は理由書を作成して通知しないといけませんので、理由書に書けないような更正を行うことができないということになります。


修正申告に応じなかったからと言って不利益を被るものではありません。むしろ、修正申告に応じた場合には、訴訟への道が閉ざされます。誤りを納得しているようでしたら、修正申告に応じればよいでしょう。ただし、是正金額が僅少な問題点については、修正申告では指導事項になることもありますが、更正では指導事項も含めて処理されることになります。


川口 誠(カワグチ マコト)

監修者プロフィール

川口 誠(カワグチ マコト)

国税局では高度な調査力が必要とされる調査部において、10年以上にわたって上場企業や外国法人等の税務調査に従事する。また、国税庁においては、全国の国税局にある調査部の監理・監督を行い、国税組織の事務運営にも携わる。

略歴
平成24~28年 東京国税局 調査第四部各調査部門、調査第一部調査管理課
平成29~30年 国税庁 調査査察部 調査課
令和元~5年 東京国税局 調査第一部 国際調査課、国際調査管理課、広域情報管理課
令和6年 ON税理士法人と業務提携

実績
中小企業から上場企業等まで100以上の会社の税務調査を行う。

メディア・著書
「元国税の不動産専門税理士が教える!不動産投資 節税の教科書」

資格・免許
税理士

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