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2025.06.09 税務コラム

不動産相続では小規模宅地等の特例をまず検討!/税務コラム〜[vol.017]

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例は、一定の面積を限度として、相続税評価額から50%あるいは80%の割合を減額することができます。不動産の相続に当たって、小規模宅地の特例の適用は必ず検討しましょう。

CONTENTS

小規模宅地等の特例の種類

小規模宅地等の特例には居住用、事業用があり、事業用は貸付とそれ以外で大きく分かれています。それぞれの限度面積は異なり、限度面積を超えた場合でも、その不動産が対象にならないわけではなく、限度面積の範囲内で特例が適用されます。


宅地等の用途限度面積減額割合
居住用特定居住用330㎡80%
事業用特定事業用400㎡80%
貸付事業用200㎡50%


 


小規模宅地等の特例の要件

①居住用宅地等の要件


基本的には、亡くなった人が、その宅地等に住んでいたことが要件になります。ただ、老人ホーム等に入居・入所している場合も含まれます。介護保険法や老人福祉法等の法令に規定されている以下の対象者や施設が該当します。


対象者入居・入所施設
・要介護認定、要支援認定を受けていた人
・厚生労働大臣が定める居宅要支援被保険者に該当していた人
・認知症対応型老人共同生活援助事業が
行われる住居、
 養護老人ホーム、
 特別養護老人ホーム、
 軽費老人ホーム、
 有料老人ホーム
・介護老人保健施設、
 介護医療院
・サービス付き高齢者向け住宅
障害支援区分の認定を受けていた人・障害者支援施設
・共同生活援助を行う住居


それ以外にも、宅地等を取得した人(相続人)ごとに要件がありますが、配偶者が取得した場合はありませんので、積極的に特例を利用することができます。


一緒に住んでいた親族が宅地等を取得した場合には、申告期限まで家屋に住み、申告期限まで宅地等を所有していることが要件になります。


別居している親族が宅地等を取得した場合であっても、以下を満たすと認められます。いわゆる「家なき子特例」と呼ばれます。


1. 亡くなった人に配偶者や同居している相続人がいない
2. 家なき子が相続開始前3年以内に持家に住んだことがない(親族や関係法人等の持家も含む)
3. 家なき子が、相続開始時に住んでいる家屋を過去に所有したことがない
4. 申告期限まで宅地等を所有


3によって、子供が住んでいる家を孫に贈与したり、親に買い取らせたりして、家なき子にする方法を防いでいます。


②特定事業用宅地等の要件


亡くなった人が事業を行っている宅地等が対象になります。生計を一にしていた(生活費を共有していた)親族が事業を行っている宅地等も含まれます。ただし、相続開始前3年以内に事業に供された宅地等は除かれます。


申告期限まで事業を行い、申告期限まで宅地等を所有していることが要件になります。


③貸付事業用宅地等の要件


亡くなった人が不動産賃貸などの貸付事業を行っている宅地等が対象になります。生計を一にしていた(生活費を共有していた)親族が貸付事業を行っている宅地等も含まれます。こちらも、相続開始前3年以内に貸付事業に供された宅地等は除かれます。


小規模宅地等の特例を適用しない場合であっても、賃貸物件は借地権や借家権を加味することによって、宅地等の相続税評価額を抑えることができます。ただし、小規模宅地等の特例が適用されない相続開始前3年以内に貸付事業に供されているような宅地等ですと、税務調査において否認されるリスクが高まりますので、注意が必要です。


申告期限まで貸付事業を行い、申告期限まで宅地等を所有していることが要件になります。


小規模宅地等の特例は併用も可能

小規模宅地等の特例は併用することができます。


ただし、③貸付事業用宅地等に適用する場合には、以下の通り、面積調整が必要になってきます。③貸付事業用宅地等に200㎡を利用すると、他の①居住用宅地等や②特定事業用宅地等では小規模宅地等の特例を適用することはできません。


場合限度面積
③貸付事業用なし③居住用(≦330㎡)+②特定事業用(≦400㎡)≦730㎡
③貸付事業用あり①居住用×200/400+②特定事業用×200/330㎡+③貸付事業用≦200㎡
(面積調整)


一見すると、③貸付事業用宅地等に適用しない方が、限度面積が730㎡と大きくなりますし、①居住用宅地等や②特定事業用宅地等の方が減額割合も80%と高いので、有利になりそうです。


しかし、面積や減額割合だけで判断することはできません。なぜなら、㎡単価によって減額される金額が異なってくるからです。③貸付事業用宅地等の面積が200㎡で減額割合が50%だとしても、㎡単価が大きくなると、減額される金額が大きくなります。したがって、①居住用宅地等、②特定事業用宅地等、③貸付事業用宅地等のどの宅地等に優先して小規模宅地等の特例を適用するのか、事前にシミュレーションをすることが大切です。


また、相続人の誰が小規模宅地等の特例の適用となる宅地等を相続するかによっても相続税は異なってきます。


川口 誠(カワグチ マコト)

監修者プロフィール

川口 誠(カワグチ マコト)

国税局では高度な調査力が必要とされる調査部において、10年以上にわたって上場企業や外国法人等の税務調査に従事する。また、国税庁においては、全国の国税局にある調査部の監理・監督を行い、国税組織の事務運営にも携わる。

略歴
平成24~28年 東京国税局 調査第四部各調査部門、調査第一部調査管理課
平成29~30年 国税庁 調査査察部 調査課
令和元~5年 東京国税局 調査第一部 国際調査課、国際調査管理課、広域情報管理課
令和6年 ON税理士法人と業務提携

実績
中小企業から上場企業等まで100以上の会社の税務調査を行う。

メディア・著書
「元国税の不動産専門税理士が教える!不動産投資 節税の教科書」

資格・免許
税理士

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