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2025.10.14 税務コラム
2025年(令和7年)年末調整の変更点|基礎控除・給与所得控除がアップ!/税務コラム~[vol.021]
2025年(令和7年)の年末調整は、例年以上に大きな変更があります。特に、基礎控除や給与所得控除の引き上げは、多くの納税者に影響してきます。この記事では、年末調整で知っておくべき3つのポイントを解説します。
CONTENTS
2025年(令和7年)の年末調整の大きな変更点
【ポイント①】所得税負担が軽減!「基礎控除」と「給与所得控除」の引き上げ
今年の変更の大きな点が、多くの納税者に影響を与える「基礎控除」と「給与所得控除」の所得控除額の引き上げです。
この2つの控除額の引き上げにより、給与収入が160万円以下であれば所得税が課税されない新たな「年収の壁」が新設されました。これにより、特にパートやアルバイトで働く方々の手取り収入が増えることが期待されています。
基礎控除の引き上げ
基礎控除は税金の負担を軽減してくれる基本的な制度になります。これまで合計所得金額2,400万円以下の人に一律48万円だった基礎控除額が、2,350万円以下の人は所得金額に応じて変わっています。132万円以下の人は、前年までの基礎控除額と比べて47万円増加しています。
| 合計所得金額 | 改正前 | 令和7年 | |
|---|---|---|---|
| 132万円以下 | 48万円 | 95万円 | |
| 132万円超 | 336万円以下 | 88万円 | |
| 336万円超 | 489万円以下 | 68万円 | |
| 489万円超 | 655万円以下 | 63万円 | |
| 655万円超 | 2,350万円以下 | 58万円 | |
| 2,350万円超 | 2,400万円以下 | 48万円 | |
| 2,400万円超 | 2,450万円以下 | 32万円 | |
| 2,450万円超 | 2,500万円以下 | 16万円 | |
| 2,500万円超 | ー | ||
給与所得控除の最低保障額引き上げ
給与所得控除は勤務者の概算経費になります。給与所得控除の最低額が55万円から65万円に引き上げられ、給与等の収入金額が190万以下の人の給与所得控除額は65万円となりました。
| 給与等の収入金額 | 改正前 | 令和7年 | |
|---|---|---|---|
| 162万5,000円以下 | 55万円 | 65万円 | |
| 162万5,000円超 | 180万円以下 | 収入金額×40%−10万円 | |
| 180万円超 | 190万円以下 | 収入金額×30%+8万円 | |
| 190万円超 | 360万円以下 | 収入金額×30%+8万円 | |
| 360万円超 | 660万円以下 | 収入金額×20%+44万円 | |
| 660万円超 | 850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 | |
| 850万円超 | 195万円 | ||
【ポイント②】新しい控除「特定親族特別控除」の創設と申告書の追加
これまで特定扶養控除の対象であった19歳以上23歳未満の大学生や専門学校生などがいる人に対して、新たに「特定親族特別控除」が創設されました。特定親族とは、年齢が19歳以上23歳未満で、所得金額が58万円超123万円以下の要件を満たす者をいいます。
この控除を受けるためには、「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を提出する必要があります。この書類を提出しないと、控除の適用を受けられず、税金の払い過ぎにつながる可能性があります。特に、お子さんが大学に進学したばかりのご家庭は、この新しい控除の存在を忘れずに確認してください。
非居住者である特定親族であっても、親族関係書類と送金関係書類を提出することによって、特定親族特別控除の適用を受けることができます。
【ポイント③】扶養親族の所得要件の変更
扶養控除の対象となる扶養親族の所得要件についても見直されました。
配偶者や扶養親族については、所得金額の要件が48万円以下から58万円以下に引き上げられます。これにより、より広い範囲の親族を扶養控除の対象とできるようになります。
勤労学生の所得金額の要件は、これまで75万円以下でしたが、85万円以下に引き上げられます。これにより、アルバイト収入のある学生が扶養控除の対象となりやすくなります。
これらの変更によって、これまで扶養の対象外だったご家族を、新たに扶養親族として申告できる可能性があります。年末調整の際には、ご家族の所得状況を改めて確認するようにしましょう。
書類様式の変更と複雑化
上記変更に伴い、年末調整の申告書類が変更されており、「給与所得者の特定親族特別控除申告書」が追加されています。新しい様式は「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 給与所得者の特定親族特別控除申告書 兼 所得金額調整控除申告書」という名称になります。
一見するとシンプルになったように見えますが、1枚の書類で複数の控除を申告するため、記入欄が増え、より複雑化することが予想されます。記入ミスや漏れが起こりやすくなるため、書類を提出する際は細部までしっかりと確認することが大切です。

ポイント
①「基礎控除」の引き上げ
②「特定親族特別控除」の申告書追加
③ 配偶者の所得要件変更
実務上の注意点
これらの変更に対応するため、会社の経理担当者は早めの準備が不可欠です。
給与計算ソフトや年末調整システムが、新しい控除額や申告書様式に対応しているか、ベンダーに確認しましょう。また、従業員が迷わないよう、変更点をまとめた資料を作成したり、記入例を提示したりするなど、丁寧なアナウンスが求められます。特に、新しい控除の存在を周知することが重要です。令和7年12月の年末調整では、変更後の控除額を適用して1年間の税額を計算し、変更前の源泉徴収税額と精算する流れになります。計算ミスのないよう、細心の注意を払う必要があります。
今年の年末調整は、例年以上に多くの変更点があります。年末調整の申告書類は、会社によって異なりますが、例年11月〜12月頃に提出が求められます。変更内容に関する書類もこのタイミングで提出が必要です。従業員の皆さんは、会社からの案内をよく読み、疑問点があれば早めに確認しましょう。そして、ご自身の見込年収額を把握することはもちろんですが、配偶者や大学生、専門学校生などのお子さんの見込年収額の確認をしとくことが大切になってきます。
監修者プロフィール
川口 誠(カワグチ マコト)
国税局では高度な調査力が必要とされる調査部において、10年以上にわたって上場企業や外国法人等の税務調査に従事する。また、国税庁においては、全国の国税局にある調査部の監理・監督を行い、国税組織の事務運営にも携わる。
略歴
平成24~28年 東京国税局 調査第四部各調査部門、調査第一部調査管理課
平成29~30年 国税庁 調査査察部 調査課
令和元~5年 東京国税局 調査第一部 国際調査課、国際調査管理課、広域情報管理課
令和6年 ON税理士法人と業務提携
実績
中小企業から上場企業等まで100以上の会社の税務調査を行う。
メディア・著書
「元国税の不動産専門税理士が教える!不動産投資 節税の教科書」
資格・免許
税理士
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