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2024.12.19 税務コラム

国税庁発表の法人の税務調査事績からわかること/税務コラム〜[vol.007]

国税庁発表の法人の税務調査事績からわかること

先日、法人税等の調査事績が公表されました。毎年、この時期になると国税庁が公表しています。
税務調査について参考となる情報があったり、税務署はこういった取組みで調査していることがわかったりします。

国税庁「令和5事務年度 法人税等の調査事績の概要」はこちら

CONTENTS

法人の税務調査の非違割合は76%、不正発見割合は22%

法人の税務調査の非違割合


国税庁「令和5事務年度 法人税等の調査事績の概要」


日本の法人数は約292万社(国税庁「令和4年度統計年報」)ですので、実地調査件数が59千件ということは、税務調査の確率は約2%で、50社に1社の割合で税務調査を受けていることになります。


そして、税務調査を受けて非違があった件数は45千件で、非違割合は約76%(=45千件/59千件)に及び、4社に3社の割合で誤っていることになります。ここからわかることは、税務調査を受けると修正申告や更正に繋がることが多く、税務署は事前に申告内容や資料情報等から誤っている法人を選んで税務調査していることが伺えます。逆に言うと、普段から適正に申告を行うことが税務調査を受けないことへの第一歩なのかもしれません。


税務調査において不正計算があった件数は13千件で、不正発見割合は約22%(=13千件/59千件)となっています。5社に1社の割合で仮装隠ぺいの事実が認められたことになりますが、実感として多いと感じる方もいらっしゃると思います。先ほど同様に、税務署が事前に資料情報等から不正計算を行っている会社の情報を収集していることが伺えます。不正計算は決して行ってはいけません。加算税の負担が重くなるだけでなく、不正計算を行ったという事実が税務署に残り、今後、税務調査を受ける頻度が高くなる可能性もあります。


現金管理は常日頃から適切に行う

現金管理は常日頃から適切に行う


国税庁「令和5事務年度 法人税等の調査事績の概要」


不正発見割合については業種ごとに順位を付けて公表しています。上位3位の業種に共通する特徴があるのですが、おわかりになるでしょうか。


それは、飲食店等で現金商売を行っているということです。このような業種では現金管理が大切になってきます。目の前に現金があるので、現金管理がずさんになると、売上を隠したり、個人的な費用を経費に付け込んだりすることに繋がりかねません。


税務調査では現金商売をしている法人に対しては、通常、手元にある現金残高と帳簿上の現金残高が合うかどうかをチェックする、いわゆる現金監査が行われます。したがって、現金商売はもちろんですが、その他の業種であっても現金を扱っている場合には、常日頃から両者が合うかどうかを確認して、合わなければ合わない理由を解明するなど、現金管理を適切に行うようにしましょう。


法人の税務調査では消費税還付や海外取引は重点的に見られる

国税庁は「適正かつ公平な賦課及び徴収の実現」を使命としており、その中で、重点課題として、消費税の不正還付や国際的な租税回避への対応を掲げています。国税庁が作成している「国税庁レポート」や「税務行政の課題と現状」にもそのことが記載されています。


法人の調査事績の中では、主要な取組として以下の事績を公表するとともに、調査事例についてポンチ絵を交えて紹介しています。


1. 消費税還付申告法人に対する消費税の実地調査事績の状況


2. 海外取引等に係る調査等の状況


3. 無申告法人に対する実地調査の状況


上記 1. の調査事例として、実際の取引とは異なる高額な商品を輸出したかのように装い、不正に消費税の還付を受けていた事例が紹介されています。税関からの情報を端緒にして把握し、税務署は仕入先にどんな商品を輸出したのかについても確認しています。


また、上記 2. の海外取引がある法人については、その調査事績に加え、外国子会社合算税制や移転価格課税に係る調査事績も公表しています。


普段の申告から消費税還付(中間納付に伴うものを除く)や海外取引については、より注意を払って見ておきたいところです。特に、近年、消費税の不正還付は国庫金の搾取と言われており、東京国税局では対策本部を立ち上げて力を入れているところです。


消費税の還付申告を行う際には、申告書に「消費税の還付申告に関する明細書」を添付して提出します。国税庁のホームページには記載例が掲載されているので、参考にしてみるとよいと思います。消費税の還付申告に対しては税務署も審査を行っており、必要に応じて実地調査に切り替えることもあるので、還付の理由となった輸出や設備投資に係る証ひょう書類を整理しておくことが大切です。


法人の税務調査には簡易な接触もある

法人の税務調査には簡易な接触もある


国税庁「令和5事務年度 法人税等の調査事績の概要」


簡易な接触の事績についても公表しています。聞きなれないと思いますが、簡易な接触とは、実地調査ではなく、税務署からの電話や書面での連絡、来署による面接により、自発的に申告内容の見直しを行ってもらうことを言います。限られた職員のマンパワーで調査するには限界があり、納税者の税務コンプライアンスの維持・向上を図るために簡易な接触が行われています。


先ほど見た実地調査件数59千件に比べ、簡易な接触件数は70千件と多くなっています。


税務署はやみくもに接触しているわけではありません。よくあるケースとしては、別表や決算書の各数値が突合しないなどの理由から申告に誤りが認められる可能性が高い場合です。


簡易な接触から実地調査に切り替わることもあるので、税務署がどういった点から接触しているのかを把握して、適切に対応することが求められます。不安でしたら税理士に相談してもらってもよいかと思います。


また、確定申告が終わった後に時間をおいて、改めて申告内容をチェックしてみるのも良いかもしれません。


川口 誠(カワグチ マコト)

監修者プロフィール

川口 誠(カワグチ マコト)

国税局では高度な調査力が必要とされる調査部において、10年以上にわたって上場企業や外国法人等の税務調査に従事する。また、国税庁においては、全国の国税局にある調査部の監理・監督を行い、国税組織の事務運営にも携わる。

略歴
平成24~28年 東京国税局 調査第四部各調査部門、調査第一部調査管理課
平成29~30年 国税庁 調査査察部 調査課
令和元~5年 東京国税局 調査第一部 国際調査課、国際調査管理課、広域情報管理課
令和6年 ON税理士法人と業務提携

実績
中小企業から上場企業等まで100以上の会社の税務調査を行う。

メディア・著書
「元国税の不動産専門税理士が教える!不動産投資 節税の教科書」

資格・免許
税理士

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