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2025.12.15 税務コラム

【オンライン利用ツールQ&A公開!】「オンライン税務調査」で変わる税務署等とのコミュニケーションと手続き/税務コラム~[vol.025]

オンライン税務調査

先日(2025年11月)、国税庁は税務行政におけるオンラインツールの利用に関するQ&Aを公表しました。

本記事では、公表されたQ&Aに基づき、税務調査等で利用可能となるインターネットメール、Web会議システム、オンラインストレージサービスといったGSSツールについて、具体的な利用シーンや手続き、注意点を分かりやすく解説します。

CONTENTS

GSS導入によるデジタルシフトの全貌

納税者の利便性向上と税務行政の効率化を図る観点から、デジタル庁提供の政府共通業務実施環境であるGSS(ガバメントソリューションサービス)が導入されました。国税庁は、令和7年9月以降、GSSを順次導入しています。これにより、以下のオンラインツールが税務行政の業務で活用され、特に税務調査等において「オンライン税務調査」という新たな手法を可能にしています。これは、単なるツール追加ではなく税務行政DXを推進する取り組みです。



  1. 1. インターネットメール

  2. 2. Web会議システム(Microsoft Teams)

  3. 3. オンラインストレージサービス(PrimeDrive)

  4. 4. アンケート作成ツール(Microsoft Forms)


この取り組みは、令和7年10月より金沢国税局と福岡国税局およびその管内税務署で先行利用が開始されており、その他の国税局・税務署にも順次拡大される予定です。


「オンライン税務調査」利用の大原則:双方の合意

オンラインツールの利用、すなわち「オンライン税務調査」の実施は、税務署及び国税局(税務署等)の担当者と利用者の双方の合意が前提となります。利用者の理解を得ることを最も重要視しており、税務署等の担当者から利用者に対して、利用に関する意思確認が行われます。


しかし、全ての調査がオンラインで完結するわけではありません。Q&A 問2にもある通り、臨場が必要な場合や、税務署等が効率的ではないと判断した場合は、従来通り対面での調査が実施されます。現状は、対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド形式が主流となる見込みです。


安全かつ確実なオンラインツールの利用開始フロー

オンラインツール、特にメール、Microsoft Teams、PrimeDriveの利用を開始するには、以下のステップが必要です。これは「オンライン税務調査」への参加に不可欠な手続きです。


【Step 1】利用意思の確認と同意・登録


オンラインツールの利用を希望する場合、まず税務署等の担当者から提示される「オンラインツールの利用に関する同意事項」の内容に同意することが必要です。


同意後、利用に使用するメールアドレスなどの所定事項を、Microsoft Formsのフォーマットから登録します。注意点としては、Microsoft Formsのフォーマットは税務署・国税局ごとに用意されているため、利用者自身の所轄税務署等のフォーマットを正確に選択して登録する必要があります。また、Q&A 問3, 問4, 問5の通り、メールアドレスの変更、納税地の異動による担当者の変更、または税理士が別の案件に関与する場合など、利用環境や調査案件が変わる際には改めて再登録が必要です。


【Step 2】テストメールの送受信によるなりすまし防止


登録が完了すると、税務署等の担当者から登録メールアドレス宛にテストメールが送信されます。


なりすまし防止のため、担当者が電話または対面によりテストメールの受信確認を行い、利用者がテストメールに返信することで、インターネットメールの利用が正式に開始されます。この確認手順は、オンライン環境でのセキュリティを確保するための重要な仕組みです(Q&A 問11)。スムーズなやり取りのため、ドメインが「@nta.go.jp」からのメールが受信可能となるよう設定を確認することが推奨されています。


【Step 3】TeamsおよびPrimeDriveの利用開始


Microsoft TeamsおよびPrimeDriveは、インターネットメールを通じて登録メールアドレス宛に送付されるURLにアクセスすることで利用可能となります。Microsoft Teamsはスマホ・タブレットからの利用に限りアプリが必要です(Q&A 問7)。


「オンライン税務調査」におけるツールの利用シーンと制約

オンラインツールは、税務調査のほか、行政指導、滞納整理、査察調査等(総称して「税務調査等」)の際に必要に応じて利用されます。行政指導には書面添付制度に基づく意見聴取も含まれます。


Web会議システム(Microsoft Teams)については、「オンライン税務調査」の中心となるツールで、質問検査や行政指導などに利用されます。ただし、滞納整理及び査察調査以外での利用に限定されます。


また、インターネットメールは、日程調整、準備資料の連絡・提出依頼、Microsoft TeamsやPrimeDriveのURLの連絡など、主に連絡・調整に使われ(Q&A 問17)、PrimeDriveは、大容量の電子データ資料の提出に使われます(Q&A 問14, 問18)。


「オンライン税務調査」の公正・安全性を守るための重要ルール

ツール機能利用に関する制約
インターネットメール
/PrimeDrive
申告書・届出書等の提出不可。
必ず書面またはe-Taxで提出。
誤って提出した場合は再提出が必要。(Q&A 問13
インターネットメール
/PrimeDrive
税務署等からの資料提供原則行わない。
直接交付や郵送などの手段による。(Q&A 問15
Microsoft Teams録音・録画、文字起こし、チャット、ホワイトボード禁止。(Q&A 問16
Microsoft Teams資料等の画面共有納税者等からの利用は可能。
資料提示を求められる場合あり。(Q&A 問16


納税者・税理士が備えるべきこと

「オンライン税務調査」の導入は、日本の税務行政が新たなフェーズに入ったことを示しています。移動時間や書類のやり取りの削減といったメリットを享受するためにも、納税者や税理士はこの変化に対応し、デジタルツールを適切に活用する準備が必要です。



  1. ・手続きの正確な実施
    所轄税務署等のMicrosoft Formsから正確に登録し、変更の都度、再登録手続きを怠らないこと。

  2. ・セキュリティ意識の向上
    なりすまし防止のため、税務署等の担当者からのメールアドレスを登録するなど、メールの真偽を判別する対策をとること。

  3. ・ツールの適正利用
    Microsoft Teamsでの録画禁止などのルールを順守し、申告書等の提出方法を誤らないようにすること。


この新しいデジタル環境を理解し、定められたルールの中でオンラインツールを活用することが、よりスムーズで効率的な税務対応への鍵となるでしょう。


税務行政におけるオンラインツールの利用に関するQ&A一覧(要約)

質問番号質問(要約)回答の要点
【利用に関する一般的な事項】
問1どのような場面で利用できるか。関係民間団体や契約事業者との連絡、および国税当局の判断による税務調査、行政指導、滞納整理、査察調査等。
問2税務調査は全てオンラインで完結するか。全ては完結しない。税務署等と利用者の双方の合意と、国税当局が効率的と判断した場合に利用。
臨場が必要な場合は対面。
問3登録したメールアドレスを変更したい場合の手続きは。Microsoft Formsから再登録が必要。
変更前のメールアドレスは使用不可になる。
税務署等の担当者に連絡する。
問4転居等で納税地・調査担当者が変わった場合の継続利用手続きは。改めてMicrosoft Formsから同意・再登録が必要。
速やかに税務署等の担当者に連絡する。
問5税理士が同じ税務署で別の税務調査に関与する場合の継続利用は。改めてMicrosoft Formsから同意・再登録が必要。
問6関与税理士がいる場合、納税者と税理士の双方で利用手続きが必要か。双方で利用する場合は、それぞれがMicrosoft Formsから同意・登録が必要。
問7オンラインツール利用にアプリのダウンロードは必要か。インターネットメールとPrimeDriveは不要。
Microsoft Teamsはスマホ・タブレットからのアクセスの場合、アプリが必要。
問8登録するメールアドレスに制限はあるか。ドメイン等の制限はないが、ドメイン「@nta.go.jp」からのメールが受信可能となるよう設定確認が必要。
問9全ての国税局・税務署で利用できるか。令和7年10月より金沢・福岡国税局とその管内税務署で開始。その他は令和8年3月以降順次開始予定。
【セキュリティに関する事項】
問10個人情報などの機密性の高い情報を取り扱うか。氏名、電話番号、住所等(個人番号を除く)を取り扱う場合がある。
政府統一基準に基づき適切にセキュリティ対策を講じている。
問11なりすまし行為のおそれはないか。テストメールの送受信後、電話または対面で受信確認を行うことで、なりすましを防ぐ。
問12誤送信防止のためにどのような対策をとっているか。事前システム登録されたメールアドレスにのみ送信可能。
管理者による宛先・内容確認、受信メールへの返信による送信などを行う。
【各ツールの利用に関する事項】
問13申告書や各種届出書等をメールやPrimeDriveで提出してもよいか。不可。
申告書等は書面又はe-Taxでの提出が必要。
誤って提出した場合は改めて正規の方法で提出が必要。
問14資料のデータ提出に容量や形式の制限はあるか。メールは、合計20MBまで、exe形式等を除く。
PrimeDriveは、1ファイル1.9GBまで(最大20ファイル)、形式制限なし。
問15税務署等から資料を提供してもらうことは可能か。原則としてインターネットメールやPrimeDriveは利用しない。
直接交付や郵送などの手段による。
問16Microsoft Teamsの録音・録画や文字起こしなどの機能を使用してもよいか。録音・録画、チャット、文字起こし、ホワイトボード機能の利用は禁止。
納税者等側からの画面共有は可能。
問17インターネットメールではどのような連絡が行われるか。日程調整、準備資料の連絡・提出依頼、URLの連絡、キャッシュレス納付の利用勧奨など。
事前通知は原則口頭。
問18利用者が税務署等に電子データを提出する場合、どのような手段があるか。メール、PrimeDrive、e-Tax(PDF/CSV形式、容量制限あり)の3つの方法。
容量や形式に応じて選択する。


※上記コラムは以下を参照に作成しております。


国税庁「税務行政におけるオンラインツールの利用について


国税庁「税務行政におけるオンラインツールの利用に関するQ&A(令和7年11月)


川口 誠(カワグチ マコト)

監修者プロフィール

川口 誠(カワグチ マコト)

国税局では高度な調査力が必要とされる調査部において、10年以上にわたって上場企業や外国法人等の税務調査に従事する。また、国税庁においては、全国の国税局にある調査部の監理・監督を行い、国税組織の事務運営にも携わる。

略歴
平成24~28年 東京国税局 調査第四部各調査部門、調査第一部調査管理課
平成29~30年 国税庁 調査査察部 調査課
令和元~5年 東京国税局 調査第一部 国際調査課、国際調査管理課、広域情報管理課
令和6年 ON税理士法人と業務提携

実績
中小企業から上場企業等まで100以上の会社の税務調査を行う。

メディア・著書
「元国税の不動産専門税理士が教える!不動産投資 節税の教科書」

資格・免許
税理士

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