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2025.12.18 税務コラム
【令和7年分(2025年分)確定申告】大改正でどう変わる? 基礎控除・給与所得控除の見直しと新設「特定親族特別控除」を解説/税務コラム~[vol.026]
令和7年分(2025年分)の確定申告は、前年である令和7年1月1日から12月31日までの所得に対するものです。この令和7年分の所得税については、「基礎控除」「給与所得控除」の大幅な見直しと、新たな所得控除である「特定親族特別控除」の新設が適用されます。これらの改正は、納税者の皆様の税負担や、控除の適用要件に大きな影響を与えます。
本記事では、令和7年分の確定申告で特に重要な変更点をわかりやすく解説します。
CONTENTS
令和7年分(2025年分)確定申告の申告期間
令和7年分(2025年分)の所得に対する確定申告期間は、原則として令和8年2月16日(月)から令和8年3月16日(月)までです。令和8年は3月15日が日曜日で、翌日の月曜日が期限となります。所得税の還付を受けるための申告は、令和8年1月1日から可能となります。
所得税及び復興特別所得税の納付期限も、原則として申告期限と同じ令和8年3月16日(月)です。ただし、振替納税の手続きをすると、令和8年4月23日(木)
なお、個人事業主の消費税及び地方消費税の申告・納付期限は、令和8年3月31日(火)までとなります(所得税の期限とは異なります)。
複雑な控除改正が適用されるため、計算ミスを防ぐためにも、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」やe-Tax(電子申告)の活用が推奨されます。e-Taxを利用すれば、自宅から申告ができ、一部の控除証明書はデータで自動連携されるため便利です。
【改正①】基礎控除の大幅な見直しと細分化
今回の税制改正で最も注目すべき点は、基礎控除額が合計所得金額に応じて大幅に見直され、複雑に細分化されたことです。
従来、基礎控除額は合計所得金額2,400万円以下で一律48万円でしたが、令和7年分では、合計所得金額655万円以下の層に対して、48万円に加えて一定の「加算額」が上乗せされることになりました。この改正は、低所得者層の税負担を特に軽減する目的があり、合計所得金額132万円以下の層(基礎控除95万円)は、従来の基礎控除額(48万円)から 47万円 もの大幅な引き上げとなります。
| 合計所得金額 | 基礎控除額(改正後) | 備考 |
|---|---|---|
| 132万円以下 | 95万円 | 48万円に47万円加算 (特例措置) |
| 132万円超 336万円以下 | 88万円 | 48万円に40万円加算 (特例措置) |
| 336万円超 489万円以下 | 68万円 | 48万円に20万円加算 (特例措置) |
| 489万円超 655万円以下 | 63万円 | 48万円に15万円加算 (特例措置) |
| 655万円超 2,350万円以下 | 58万円 | 48万円に10万円加算 |
| 2,350万円超 2,400万円以下 | 48万円 | 従来通り |
| 2,400万円超 2,450万円以下 | 32万円 | 従来通り |
| 2,450万円超 2,500万円以下 | 16万円 | 従来通り |
| 2,500万円超 | 0円 | 従来通り |
また、今回の基礎控除の細分化は、給与所得者だけでなく、公的年金受給者にも影響します。公的年金の源泉徴収計算でも新基準が適用され、年金額が一定以下の場合に「源泉徴収されない」基準が引き上げられるため、受給者は還付額の増加や課税の有無が従来と変わる可能性があります。
令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|日本年金機構
基礎控除の判定が複雑になったことで、納税者ご自身で正確な控除額を把握するのが難しくなります。
特に、複数の所得源がある方(給与所得と不動産所得など)は、ご自身の「合計所得金額」を正確に計算し、該当する基礎控除額を適用する必要があります。
合計所得金額655万円以下の層に対する高額な基礎控除額(95万円、88万円、68万円、63万円)は、令和7年分および令和8年分のみの「暫定的措置」です。令和9年分以降は、合計所得金額2,350万円以下で一律58万円となる予定です。
【改正②】給与所得控除の最低保障額の引き上げ
給与所得控除は、給与収入金額に応じて定められる控除で、会社員やパート・アルバイトの方の「必要経費」に相当するものです。
給与所得控除の最低保障額が、現行の55万円から65万円に引き上げられました。給与収入が190万円以下の場合、改正後の給与所得控除は一律 65万円 となります。
これにより、計算が簡素化されるとともに、年収162.5万円を超える層の税負担も緩和されています。
| 給与等の収入金額 (年額) | 改正前 控除額 (〜令和6年分) | 改正後 控除額 (令和7年分〜) | 変更点 |
|---|---|---|---|
| 1,625,000円まで | 550,000円 | 650,000円 | 最低保障額が 10万円引き上げ |
| 1,625,001円〜 1,800,000円 | 収入金額 × 40% – 100,000円 | 650,000円 | 定額控除(65万円)に統合 |
| 1,800,001円〜 1,900,000円 | 収入金額 × 30% + 80,000円 | 650,000円 | 定額控除(65万円)に統合 |
| 1,900,001円〜 3,600,000円 | 収入金額 × 30% + 80,000円 | 収入金額 × 30% + 80,000円 | 変更なし |
| 3,600,001円〜 6,600,000円 | 収入金額 × 20% + 440,000円 | 収入金額 × 20% + 440,000円 | 変更なし |
| 6,600,001円〜 8,500,000円 | 収入金額 × 10% + 1,100,000円 | 収入金額 × 10% + 1,100,000円 | 変更なし |
| 8,500,001円以上 | 1,950,000円(上限) | 1,950,000円(上限) | 変更なし |
これにより、課税されるラインが上昇し、非課税となる範囲(年収の壁)が広がります。例えば、基礎控除が95万円と仮定すると、給与収入が160万円(給与所得控除65万円+基礎控除95万円)まで所得税の課税対象外となります(扶養控除等の適用がない場合)。
【改正③】扶養親族等の所得要件の引き上げ
基礎控除額の見直しに伴い、扶養控除や配偶者控除などの適用を受けるための「扶養親族等」の合計所得金額要件が引き上げられました。扶養親族や同一生計配偶者などの要件となる合計所得金額が、現行の48万円以下から、58万円以下に引き上げられています。
収入が給与のみの場合、合計所得金額58万円以下は、給与所得控除65万円を考慮すると、年収123万円以下に相当します(改正前は年収103万円以下)。この改正により、パート・アルバイトで働くご家族を扶養に入れている世帯で、控除を受けられる範囲が広がり、より柔軟な働き方が可能になります。この年収123万円という基準は、「123万円の壁」 と呼ばれ、扶養内で働きたいと考えるパート・アルバイトの方にとって重要な判断基準となります。
【改正④】「特定親族特別控除」の新設
今回の改正で、新たに「特定親族特別控除」が創設されました。これは、現行の扶養控除の適用を受けられない層に対する新たな救済措置です。
以下の要件を満たす「特定親族」を持つ居住者(納税者)は、その特定親族の合計所得金額に応じて、一定額を所得から控除できます。
| 特定親族の要件 | ・納税者と生計を一にする親族であること ・年齢が19歳以上23歳未満であること ・合計所得金額が58万円超 123万円以下で あること |
|---|---|
| 控除の対象外となる親族 | 控除対象配偶者、青色事業専従者等 |
通常の扶養控除の要件は「合計所得金額58万円以下」であり、この新設された控除は、扶養から外れた(所得が58万円超となった)19歳~23歳未満の親族に対する一時的な税負担の緩和策として機能します。この制度は、主に大学・専門学校等に通う子どもがアルバイトで収入を得て扶養から外れた世帯の税負担を急激に増加させないための、 激変緩和措置 としての性格を持っています。
特定親族の合計所得金額に応じて、控除額が段階的に定められています。
| 特定親族の合計所得金額 | 特定親族特別控除額 |
|---|---|
| 58万円超 85万円以下 | 63万円 |
| 85万円超 90万円以下 | 61万円 |
| 90万円超 95万円以下 | 51万円 |
| 95万円超 100万円以下 | 41万円 |
| 100万円超 105万円以下 | 31万円 |
| 105万円超 110万円以下 | 21万円 |
| 110万円超 115万円以下 | 11万円 |
| 115万円超 120万円以下 | 6万円 |
| 120万円超 123万円以下 | 3万円 |
従来の特定扶養控除(19歳以上23歳未満)の控除額は一律63万円でした。この新しい控除では、親族の所得が増えるにしたがって控除額が減少する仕組みとなり、所得が123万円を超えると控除額はゼロになります。
この「特定親族特別控除」の適用を受けるためには、年末調整で「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を提出するか、確定申告で所定の事項を記載する必要があります。特に、親族がアルバイト等で収入を得ている場合、その所得金額を正確に把握し、控除額を計算しなければいけません。
まとめ
令和7年分の確定申告は、基礎控除の細分化、給与所得控除の引き上げ、そして特定親族特別控除の新設といった、大規模な「控除」の見直しが行われます。この改正の背景には、 「働き方の多様化への対応」 と 「低所得者層への手厚い支援」 という国の政策的な意図があります。 ご自身の働き方や家族構成に照らし合わせ、どの控除が適用されるか、正確に把握することが重要です。これらの改正は、納税者の皆様にとって税負担の軽減につながる一方で、申告実務の複雑性を増すことにもなります。
特に、基礎控除や特定親族特別控除は、ご自身の合計所得金額によって控除額が変動するため、計算間違いが生じやすいポイントですので、しっかり確認しましょう。
なお、定額減税は、物価高騰の影響を踏まえ、令和6年分(2024年分)の所得税において納税者本人と扶養親族を対象に1人あたり4万円(所得税3万円、住民税1万円)の税金が減額された一時的な措置です。令和7年分(2025年分)の確定申告では、「定額減税」の適用はありません。
申告・納付期限は、原則として令和8年3月16日(月)です。早めに準備を始め、安心して申告を完了させましょう。
監修者プロフィール
川口 誠(カワグチ マコト)
国税局では高度な調査力が必要とされる調査部において、10年以上にわたって上場企業や外国法人等の税務調査に従事する。また、国税庁においては、全国の国税局にある調査部の監理・監督を行い、国税組織の事務運営にも携わる。
略歴
平成24~28年 東京国税局 調査第四部各調査部門、調査第一部調査管理課
平成29~30年 国税庁 調査査察部 調査課
令和元~5年 東京国税局 調査第一部 国際調査課、国際調査管理課、広域情報管理課
令和6年 ON税理士法人と業務提携
実績
中小企業から上場企業等まで100以上の会社の税務調査を行う。
メディア・著書
「元国税の不動産専門税理士が教える!不動産投資 節税の教科書」
資格・免許
税理士
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