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2024.08.29 税務コラム
税務調査の対象になりやすい法人/税務コラム〜[vol.001]
税務調査の対象になりやすい法人にはいくつかの特徴があります。
特徴を知って、税務調査の対象にならないようにすることもできますが、避けられない部分があります。
税務調査は決して悪いことだけではなく、今まで記帳し、申告した内容に誤りがないかどうかを見直す絶好の機会です。
本コラムでは「税務調査の対象になりやすい法人」の特徴をご紹介いたします。
CONTENTS
投書やタレコミがある法人
税務署では、メール、手紙、電話、面接により、課税漏れに関する情報を受け付けています。投書やタレコミと呼ばれます。
匿名でもかまいません。ねたみなどからくる偽りの情報もありますが、中には課税につながる有効な情報もあります。特に、経理や従業員等の身内から出ることが多いです。
投書やタレコミは、個別に管理されており、税務調査の対象となる貴重な情報源になります。
業績が好調な法人
業績が好調とは、売上が増加し、所得が出ている有所得法人をいいます。連年売上が増加し、所得が出ていれば尚更です。
有所得法人は税金を納めたくないため、売上を除外したり、架空の経費を計上したりする衝動にかられます。かつては、所得が出ていない無所得法人は税務調査の対象にならないと考えられていました。
しかし、無所得法人の中にも売上を除外したり、架空の経費を計上したりする法人があるため、最近では税務調査の対象を無所得法人にも広げています。しかしながら、依然として、有所得法人は無所得法人に比べて、税務調査の対象になりやすいのは確かです。
売上規模が大きい法人
国税庁は適正公平な課税を行う使命を担っていますが、一方では、調査官の限られたマンパワーで効率的に税務調査を行う必要があります。日本の中小企業数336万に対し、税務署の職員数は3.7万人です(企業数は中小企業庁「中小企業・小規模事業者の数(2021年6月時点)、職員数は国税庁レポート2024)。
そのためには、売上規模の大きな法人から税務調査を行うのが自然な流れになります。私の経験からすると、売上1億円が一つの目安であるといえます。
決算書の数値が異常な法人
調査官は、税務調査に行く前に、決算書の数値を並べて、推移を確認します。前年と比べて著しく増加した経費は異常値としてピックアップされます。特別損失に計上された多額の損失も同じです。
損益計算書の数値に目が行きがちですが、貸借対照表の数値の前年対比も確認します。例えば、代表者借入金が急増した場合に、代表者の資力からして多額であるときは疑います。売上除外や架空経費により簿外で生じたお金を法人に還流させようとしていることがあります。
不正グループの法人
税務署では全ての法人がグループで管理されています。過去の税務調査で不正所得が把握された法人は、不正グループとして管理されます。
また、税務調査に非協力的であったり、納税への意識が低かったりして、税務上のコンプライアンスが低い法人も対象になります。調査官が税務調査で判断し、統括官の確認のもと、不正グループに置かれます。調査官の心象も関わってきます。
不正は行った時だけではなく、今後の税務調査の対象にも影響してくるため、決して行ってはいけません。
申告書が誤っている法人
調査官は法人税と消費税の申告書に誤りがないかどうかを審理しています。
本来なら税務調査の対象ではない法人が、申告書の誤りがあることによって、税務調査の対象に振り替えられることもあります。なぜなら、税務調査の事績に取り込むことができるからです。
また、税務署では、増差所得、修更正割合(誤りの割合)等の調査事績を管理しています。税務調査に行く前から申告書の誤りがわかっていると、誤りの割合が高くなり、事績が上がるということも理由です。
資料情報に不審点がある法人
各税務署には機動官と呼ばれる調査官がおり、金融機関の口座を専門的に見ています。例えば、無申告にかかわらず、多額の取引を行っている法人については、その法人を所掌している部署に連絡します。
また、法人や個人事業者から一般取引資料せんとして売上、仕入、費用等の取引の資料を提出してもらっています。同時に、調査官は税務調査において情報収集を行っています。
例えば、Aという会社から外注先Bという会社との取引の資料が出されたとします。B社の税務調査に行ったときに、A社との取引が売上に計上されていなければおかしいことになります。取引が3月(決済翌月)であれば、B社の売掛金の内訳書にA社の名前が出てくるはずです。
重点業種に指定されている法人
国税庁や国税局では重点的に税務調査をする業種、いわゆる重点業種を指定しています。従来であれば、飲食業、風俗業等が該当しますが、最近では、流行りの業種として、シェアリング・エコノミー、仮想通貨等のインターネットを介して取引を行っている業種が挙げられます。
重点業種の法人は、他の業種よりも税務調査の対象になりやすいと言えます。
海外取引がある法人
法人が大きくなる上で海外展開は避けて通れません。海外取引になると税務の処理が複雑になります。税務調査では海外取引がある法人の4社のうち1社に誤りがあります。
国側も所得が海外に移転したり、軽課税国に所得をため込んだりすると、自らの税収が減るため、注視しています。
長期間未接触、設立以来未接触の法人
長い間、税務調査を行っていないと、いつの間にか法人の業種業態が変わっていることがあります。業種業態が変わると、法人の取引内容も変わり、税務上の取扱いも今までと同じとは言えません。改めて、税務調査で変更後の取引内容を確認する必要があります。
売上規模によっても異なりますが、10年が一般的な目安になります。
また、設立以来未接触の法人も一度は触れておかないと、状況を把握することができません。
消費税還付法人
近年、当局は消費税還付法人の税務調査に力を入れております。消費税の不正還付は、国庫金の搾取とも言える悪質性が高い行為であるためです。
消費税が還付申告の場合はすぐには還付をせずに、一定の審査を行います。申告書に添付する還付明細書には、輸出免税や設備投資等の理由を付して、輸出取引先や固定資産の取得先を記載します。その中に、不審な相手先があれば、審査から税務調査に切り替えることもあります。
監修者プロフィール
川口 誠(カワグチ マコト)
国税局では高度な調査力が必要とされる調査部において、10年以上にわたって上場企業や外国法人等の税務調査に従事する。また、国税庁においては、全国の国税局にある調査部の監理・監督を行い、国税組織の事務運営にも携わる。
略歴
平成24~28年 東京国税局 調査第四部各調査部門、調査第一部調査管理課
平成29~30年 国税庁 調査査察部 調査課
令和元~5年 東京国税局 調査第一部 国際調査課、国際調査管理課、広域情報管理課
令和6年 ON税理士法人と業務提携
実績
中小企業から上場企業等まで100以上の会社の税務調査を行う。
メディア・著書
「元国税の不動産専門税理士が教える!不動産投資 節税の教科書(仮)」(9月出版予定)
資格・免許
税理士
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