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2024.09.12 税務コラム
【2024年最新版】税務調査の確率ってどのくらい?/税務コラム〜[vol.002]
自分は税務調査の対象になるのか?と心配されている方も多いと思います。国税庁が公表している申告や調査事績から税務調査の確率がどの程度であるかを試算してみました。
あくまでも確率の話であり、個人や法人では売上や所得、相続税や贈与税では相続財産や贈与財産によって税務調査の確率は全く異なります。何よりも普段から適正に申告することを心掛けることが大切です。
個人と法人の税務調査の確率
個人の税務調査の確率
令和3年分の所得税の申告状況によると申告件数(翌年4月末日までの提出分)は656万8千人(申告納税がある方)、令和4事務年度の所得税の調査状況によると実地調査件数は46,306件であることから、個人の税務調査の確率は0.7%、100年に1回の割合で税務調査の対象になります(申告の時期と調査の時期にはタイムラグがあるため、1年ずらして試算しています。以下同じです。)。
100年に1回ということは、一生にあるかないかというレベルであり、税務調査の確率は非常に低いです。
分子、分母には給与所得者等も含まれていますが、分母から主たる所得が給与所得等を除き、主たる所得が事業所得、不動産所得に限ると、税務調査の確率は当然高くなりますが、それでも1.6%です。
法人の税務調査の確率
令和3年分(令和3年4月1日から令和4年3月31日までに終了した事業年度)の法人税の申告事績によると申告件数は306万5千件、令和4事務年度の法人税の調査状況によると実地調査件数は6万2千件であることから、法人の税務調査の確率は2.0%、50年に1回の割合で税務調査の対象になります。
先ほどの個人に比べると高くなりますが、それでも50年に1回を考えると少ないです。
私は国税局で上場企業等の会社の税務調査を行っていましたが、皆さんが知っているような上場企業は隔年で税務調査が行われています。税務調査の確率は50%、2年に1回の割合で税務調査の対象になるということです。
一度の税務調査で会社のすべての取引を確認することができないため、頻度が高くなります。売上規模が大きくなると、税務調査の確率は高くなると言えます。
税務調査の確率は減少傾向
過去の時系列で税務調査の確率はどうなっているでしょうか。
平成に入る前は法人で10%、個人で3%もあり、なんと法人は10年に1回の割合で税務調査が行われていました。それが年々下がってきています。申告件数の増加と取引の高度情報化、国際化が起因しているとされています。
[平成30年1月24日国税庁「税務行政の現状と課題」実調率の推移]
先ほど計算した通り、令和4年に法人2.0%、個人0.7%と更に下がっています。コロナ禍による実地調査の縮小が影響しているものと考えられます。
税務当局側から考えると、そもそも何%が理想的と言えるのでしょうか。過去の国会答弁では、除籍期間である7年一巡、14.3%で税務調査を行うことが一つの目安と回答されています。
今でも国会答弁では実地調査率がしばしば取り上げられています。実地調査率が大きければ大きいほど良いと言えますが、税務当局も限られた職員のマンパワーで税務調査を行う必要があります。
他にも、東京と地方での実地調査率に偏りがあるという点も問題視されています。
個人の方が税務調査の対象にならない?
個人と法人の実地調査率を比較して、個人の方が税務調査の確率が低いから税務調査の対象にならないと思われる方がいらっしゃいますが、決してそうではありません。
売上がある程度の規模になってからでないと法人成りしないだけであって、個人の中には売上の少ない納税者がたくさんいるからです。
先ほども申し上げましたが、限られた職員のマンパワーで効率的に税務調査を行い、調査事績を残すためには、100万円の売上の個人事業主と1,000万円の売上の個人事業主や法人のどちらを選ぶかと言うと、後者になるわけです。
相続税の税務調査の確率
令和3年分の相続税の申告事績によると「相続税の申告書の提出に係る被相続⼈数」は169,670人(納税が生じない申告も含む)、令和4事務年度の相続税の調査状況によると実地調査件数は8,196件であることから、相続税の税務調査の確率は4.8%、20人に1人が税務調査の対象になります。
打って変わって、個人や法人の税務調査の確率と異なり、相続税の税務調査の確率は高くなっています。なぜでしょうか。
個人や法人は全納税者が申告の対象になりますが、相続税は相続財産が少ないと申告が不要であり、確率の計算式の分母に入っていないからです。
贈与税の税務調査の確率
令和3年分の贈与税の申告状況によると申告件数(翌年4月末日までの提出分)は38万9千人(申告納税がある方)、令和4事務年度の贈与税の調査状況によると実地調査件数は2,907件であることから、贈与税の税務調査の確率は0.7%、100人に1人の割合で税務調査の対象になります。
贈与税の税務調査では、実地調査件数2,907件のうち2,732件で誤りが見つかっており、その割合は94%にも及びます。誤っている申告を対象に税務調査を行っていることが伺えます。適正な申告こそが税務調査の対象にならない一番の方法だと言えるのではないでしょうか。
譲渡所得税の税務調査の確率
令和3年分の譲渡所得税の申告状況によると申告件数(翌年4月末日までの提出分)は100万7千人(申告納税がある方)、令和4事務年度の譲渡所得税の調査状況によると実地調査件数は18,572件であることから、譲渡所得税の税務調査の確率は1.8%、50人に1人の割合で税務調査の対象になります。
【参考】
令和3年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について
令和4事務年度 所得税及び消費税調査等の状況について
令和3事務年度 法人税等の申告(課税)事績の概要
令和4事務年度 法人税等の調査事績の概要
令和3年分 相続税の申告事績の概要
令和4事務年度における相続税の調査等の状況
監修者プロフィール
川口 誠(カワグチ マコト)
国税局では高度な調査力が必要とされる調査部において、10年以上にわたって上場企業や外国法人等の税務調査に従事する。また、国税庁においては、全国の国税局にある調査部の監理・監督を行い、国税組織の事務運営にも携わる。
略歴
平成24~28年 東京国税局 調査第四部各調査部門、調査第一部調査管理課
平成29~30年 国税庁 調査査察部 調査課
令和元~5年 東京国税局 調査第一部 国際調査課、国際調査管理課、広域情報管理課
令和6年 ON税理士法人と業務提携
実績
中小企業から上場企業等まで100以上の会社の税務調査を行う。
メディア・著書
「元国税の不動産専門税理士が教える!不動産投資 節税の教科書(仮)」(9月出版予定)
資格・免許
税理士
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