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2024.10.10 税務コラム
サラリーマンができる節税対策12選/税務コラム〜[vol.004]
サラリーマンができる節税対策は限られていますが、何よりも大切なことは、確定申告や年末調整で受けられる控除にどのようなものがあるか等を知っておくことが大切です。そうしないと、自分が控除を受けられるのに、気づかずに申告漏れが生じてしまうことが往々にしてあります。
CONTENTS
扶養控除
控除対象とされる扶養親族がいる場合には控除が受けられます。大学生や専門学生には教育費がかかるため、控除額が大きくなっています。年齢で覚えると覚えやすいですね。
控除対象となるのは、生計を一にしており、扶養親族の所得金額が48万円(給与所得のみの場合は給与収入の金額が103万円)以下である必要があります。
生計を一とは、必ずしも一緒に暮らしている必要はありません。勤務や修学で別居している場合でも、生活費や学資金を渡している場合には該当することになります。ただし、同居老親は、本人や妻の直系親族(父母、祖父母など)で、同居が条件になっています。
配偶者控除・配偶者特別控除
控除対象とされる配偶者がいる場合には、本人の所得金額によって控除が受けられます。
扶養親族と同じように、控除対象となるのは、生計を一にしており、配偶者の所得金額が48万円(給与所得のみの場合は給与収入の金額が103万円)以下である必要があります。
配偶者の所得金額が48万円を越えた場合でも、本人の所得金額と配偶者の所得金額に応じて、控除することができます。先ほどの控除は配偶者控除、こちらは配偶者特別控除と呼ばれます。給与所得のみの場合の給与収入金額は198万円が限度になります。
医療費控除(セルフメディケーション税制)
生計を一にしている家族等のために支払う医療費は、10万円を超えると医療費控除の適用を受けることができます。
10万円という金額が先行してしまい、10万円以下はダメなんだと思われている方がいらっしゃいます。しかし、所得金額が200万円未満である場合には、10万円以下であっても、医療費が所得金額の5%を超えると、超えた分が対象になってきます。
また、医療費控除の適用が受けられなくても、セルフメディケーション税制として12,000円を超えると、88,000円を限度として控除することができます。セルフメディケーションとはWHO(世界保健機関)が定義しているように「自分自身の健康に責任を持ち、軽度な身体の不調を自分で手当てする」ことを目的としています。
対象となる医薬品は、スイッチOTC医薬品(医療用から転用され、薬局等で購入することができる医薬品)ですが、令和4年からは非スイッチOTC以外も追加されています。薬局等で商品を買った場合に、レシートに星印などで表示されています。
医療費控除とセルフメディケーション税制は選択適用ですので注意してください。
病院に行くことが多く、10万円を超えるような場合には医療費控除、薬局等で市販薬を多く買われる方はセルフメディケーション税制を適用するというのが目安になります。
生命保険料控除
生命保険料、介護医療保険料、個人年金保険料を支払った場合には、それぞれの保険ごとに支払った金額で計算した金額を控除することができます。最大12万円になります。
年間8万円を超えると、いくら払っても4万円までしか控除することができにないため、8万円を参考にして生命保険の契約をするのも方法の一つです。
生命保険控除証明書に記載された「~申告額」「本年12月迄のお払込予定額(ご参考)」の金額になりますが、記載がない場合には月額の保険料の12か月分を計算して控除します。
地震保険料控除
地震保険料を支払った場合には、5万円を上限として控除の適用を受けることができます。
生命保険料と同様に、年間5万円を超えるといくら払っても5万円までしか控除することができにないため、5万円を参考にして地震保険の契約をするのも方法の一つです。
なお、旧長期損害保険料を支払っている場合には、以下の金額を控除することができますが、地震保険料と合わせて5万円が限度になります。
住宅ローン控除
住宅ローンの年末残高に0.7%を乗じた金額を控除することができます。
限度額は以下の表で整理されています。建物の種類によって異なりますが、令和6年を境に減額され、一般の新築住宅が0円となっています。令和6年以降は、一般の新築住宅で、令和5年末までに建築確認を受けたもの、または、令和6年6月末までに建築されたものは、限度額を2,000万円として10年間の控除が受けられます((注)の箇所)。
※引用:国税庁タックスアンサー「No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
かつては、控除率が1%と住宅ローンの金利よりも高くなっており、お得感がありました。今は、住宅ローンの金利が上がってきていますが、適用しないという選択肢はありません。
寄付金控除(ふるさと納税)
ふるさと納税は、あくまでもお金の寄付になります。自治体に寄付すると、2,000円を超えた金額が所得税と住民税から控除されます。一定の金額が所得税から控除され、年末調整が終わっている方等は所得税が還付されます。残りの金額は来年の給与から引かれる住民税が減るかたちになります。
寄付先が5か所以内ですと、ワンストップ特例申請により確定申告が不要となります。ワンストップ特例を利用すると、所得税の還付を受けることができなくなり、全額が来年の住民税から控除されます。
年末に駆け込みで寄付すると、一時的に手元のお金が減ることになりますので、一年間を通して計画的に寄付した方がよいと言えます。
自治体からは寄付金額に応じた返礼品(寄付金の概ね30%程度の品物等)を受け取ることができます。
ふるさと納税の返礼品は一時所得に該当しますので、50万円を超える場合には申告が必要になってきます。私も税務調査で何回か見たことがありますが、富裕層は寄付金の限度額が大きいため、返礼品も高額になり、申告が漏れるケースがあるので注意が必要です。
特定支出控除
以下について、給与所得控除額の1/2を超える金額を支払ったときには、控除することができます。
※引用:国税庁タックスアンサー「No.1415 給与所得者の特定支出控除」
注意点としては、1の通勤費は自己負担額になります。
また、給与所得控除額の1/2を超える金額ですので、かなりの金額の支出になります。5で弁護士、会計士、税理士等の資格取得費があれば、対象になってくる可能性があります。
iDeCo (個人型確定拠出年金)
iDeCoは、運用益(配当、値上り益)が非課税で、受取時にも課税されませんが、最大のメリットは、支払時に社会保険料控除の対象となるということです。金融投資の中では優先して取り組むべき投資だと言えます。
iDeCoは、自営業者が6.8万円、会社員や公務員が2万円(令和6年12月以降)と限度額が決められていますので、限度額を超えた場合に次のNISAを併用して利用するかたちが良いでしょう。
注意点としては、iDeCoは60歳以降にしか引き出せないために、無理のない範囲で拠出していくことが大切です。
NISA
かつては、期間が決まっており、使い辛かったですが、令和6年から非課税保有期間が無制限になり、制度が恒久化されました。
年間の限度額は、つみたて投資は120万円、成長投資は240万円で、総額1,800万円(内成長投資が1,200万円)までになります。
意外と知らない方が多いのですが、商品を売却した場合には、簿価(取得金額)の分だけ非課税投資枠が復活して、再利用することが可能です。
※引用:金融庁「NISAを知る」
金融投資と不動産投資
所得税率が高い場合には、iDeCoやNISA以外にも更に株式投資をすることで、金融所得課税の20%の税率の適用を受けることができます。また、不動産投資によって、不動産所得のマイナスを給与所得と損益通算等をすることができます。
「富裕層はなぜ投資をするのか/税務コラム〜[vol.003]」コラムもご覧ください。
金融投資や不動産投資は、節税対策の点だけではなく、資産形成の観点からも有効です。
暦年贈与と各種非課税贈与
所得税の節税ではありませんが、相続税を見越して、贈与を積極的に行っていくことも考えていく必要があります。
子供などに非課税で贈与をすることができる制度が用意されています。
ただ、注意点としては用途が限られていることもあるので、年110万円までの暦年贈与を積極的に活用し、それでもお金が残るようでしたら上記の制度の利用が選択肢となります。
【番外編】マイクロ法人(プライベートカンパニー)設立
会社によっては、従業員として働きながら、自身の法人を設立することが認められています。マイクロ法人やプライベートカンパニーと呼ばれます。GAFA等の外資系法人は、会社員として働きながら、法人を設立することができるそうです。
なぜ法人を設立することが節税につながるのでしょうか。
彼らの給与収入は所得税の最高税率が45%、地方税を含めると55%にも及び、事業所得、不動産所得を得ると、半分が税金で減ってしまうからです。そこで、法人に事業所得、不動産所得を帰属させることによって、法人税率23.4%、地方税を含めても33%程度と税金を軽減させることができます。
監修者プロフィール
川口 誠(カワグチ マコト)
国税局では高度な調査力が必要とされる調査部において、10年以上にわたって上場企業や外国法人等の税務調査に従事する。また、国税庁においては、全国の国税局にある調査部の監理・監督を行い、国税組織の事務運営にも携わる。
略歴
平成24~28年 東京国税局 調査第四部各調査部門、調査第一部調査管理課
平成29~30年 国税庁 調査査察部 調査課
令和元~5年 東京国税局 調査第一部 国際調査課、国際調査管理課、広域情報管理課
令和6年 ON税理士法人と業務提携
実績
中小企業から上場企業等まで100以上の会社の税務調査を行う。
メディア・著書
「元国税の不動産専門税理士が教える!不動産投資 節税の教科書(仮)」(9月出版予定)
資格・免許
税理士
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