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2024.11.07 税務コラム

法人の決算月(決算期)をいつにするか/税務コラム〜[vol.005]

法人の決算月(決算期)をいつにするか

個人事業主は12月が決算になりますが、会社は決算期を自由に決めることができます。
これから会社を設立しようとしている方で決算期をいつにしようか悩まれている方は参考にしてみてください。

CONTENTS

決算月(決算期)は経営成績や財政状態の把握のためにある

そもそも決算期はなぜ必要なのでしょうか。


会社は継続的に活動していきますが、株主に事業活動の内容を報告する必要があります。決算期がないと、いつの時点までの分を報告するのかわかりません。経営者は損益計算書、貸借対照表等の決算書によって経営状況や財政状態を把握し、株主に報告します。


そして、決算書に基づき法人税等の確定申告書を作成します。


また、同じ決算期であれば、前年対比で決算書の数字を比較することができます。金額に大きな差があれば原因を確認し、今後の経営方針に生かしていきます。


日本の会社の決算月(決算期)の状況

日本の会社の決算期はどのようになっているのでしょうか。


決算期別(年1回)の申告法人数は以下の通りです。


日本の会社の決算期


国税庁「令和4年度 統計情報」


 


3月決算や12月決算の法人が多いのはわかりますが、9月決算も意外と多いですね。


4月が人事異動等で忙しいこと、監査法人や税理士が繁忙期を迎えることから、丁度逆の9月を選択していることが考えられます。


少ない方ですと、11月決算や1月決算になります。


年末調整、法定調書、償却税申告と重なるとともに、年が明けると、確定申告の時期に重なってくるので、避ける傾向にあると考えられます。


決算月(決算期)を考える上で大切なこと

繁忙期を避ける


基本的には、決算期から2か月で法人税や消費税の確定申告書を作成し、税務署に提出する必要があります。この間に業務の繁忙期を迎えると、決算や申告に思わぬミスや漏れが生じることがあるので、できる限り、避けたいところです。


例えば、小売業でお客さん商売をされている方は、年末年始、ゴールデンウィーク、お盆の時期が稼ぎ時で、この時期に決算期や申告時期が当たり、業務に支障が出るようでしたら外した方がよいかもしれません。


税金等の資金繰りを考える


法人税や消費税の確定申告書を提出するだけでなく、税金の支払いを考慮しないといけません。お金の支払いのタイミングが申告時期に立て続けに到来すると、資金繰りの悪化する恐れがあります。


個人で確定申告される方の中には、2月16日から3月15日に確定申告時期を迎え、所得税を納める人もいるでしょう。例えば、12月決算法人は法人税や消費税の確定申告書の提出期限が2月末となり、税金を支払うタイミングが重なってくるので、準備が必要になってきます。


また、固定資産税や自動車税の支払いについても考慮しないといけません。


設立1期目を12か月にする


上記の繁忙期や資金繰りが優先条件になりますが、納税コストを考えると、決算期を可能な限り、先にして税金を支払う時期を遅らせたいと思うかもしれません。そういった場合には、設立1期目を12か月にするという方法も選択肢の一つです。


設立当初からインボイス登録をしない場合には、基準期間(2年前)や特定期間の課税売上高について1,000万円により消費税の課税事業者の判定を行います。基準期間がひと月であっても年換算して判定を行うので、設立1期目を12か月にした方が良いかもしれません。


税金だけではありませんが、お金を考える上で「時間価値」が大切になってきます。


例えば、将来受け取れる100万円よりも、今受け取れる100万円の方が、価値が高いと言えます。支払いは逆のパターンになります。


減価償却費は全期間で見ればトータルとして同じ金額ですが、できる限り、早めに計上して税金を抑えるというのはこの考え方と同じになります。


税務署も決算月(決算期)を考慮して事務運営が行われている

税務署の職員が働く年度をご存知でしょうか。


通常の会社は、3月末に人事異動を知らされて、4月から新たな一年が始まるというところが多いと思います。


税務署は会計年度ではなく、6月末に人事異動(内示)を知らされて、7月10日から新たな一年が始まります。事務年度と呼ばれます。


法人課税部門では事務年度で、2月から翌年の1月の決算期の法人の申告書を処理します。処理というのは、申告書に対して税務調査、机上調査、行政指導、あるいは調査省略と何らかの対応を行うことです。


例えば、令和6事務年度(令和6年7月10日~令和7年7月9日)においては、令和6年2月期から令和7年1月期の申告書を処理することになります。


皆さんもそうだと思いますが、会計年度や暦年の始まりというのは、新たなスタートということでモチベーションが高くなりませんか。税務署の職員も同じです。3月決算法人の申告書は、基本的に5月末に提出され、事務年度の始まり(7月10日)とともに処理に力が入ります。


逆に、11月決算法人の申告書は1月末、1月決算法人の申告書は3月末に提出され、事務年度も後半から終盤に差し掛かってきます。更に、確定申告時期になると、法人課税部門の職員も含め職員総出で確定申告の応援に行きます。


つまり、3月決算法人と、11月決算や1月決算の法人とでは、力の入れ具合に差が出てくるのではないかという一つの仮定が生まれます。


自社の決算期を決めかねている方は参考にしてみてはいかがでしょうか。


川口 誠(カワグチ マコト)

監修者プロフィール

川口 誠(カワグチ マコト)

国税局では高度な調査力が必要とされる調査部において、10年以上にわたって上場企業や外国法人等の税務調査に従事する。また、国税庁においては、全国の国税局にある調査部の監理・監督を行い、国税組織の事務運営にも携わる。

略歴
平成24~28年 東京国税局 調査第四部各調査部門、調査第一部調査管理課
平成29~30年 国税庁 調査査察部 調査課
令和元~5年 東京国税局 調査第一部 国際調査課、国際調査管理課、広域情報管理課
令和6年 ON税理士法人と業務提携

実績
中小企業から上場企業等まで100以上の会社の税務調査を行う。

メディア・著書
「元国税の不動産専門税理士が教える!不動産投資 節税の教科書」

資格・免許
税理士

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