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2024.11.28 税務コラム
暦年贈与と相続時精算課税、相続税を見据えどっちを選択?/税務コラム〜[vol.006]
相続時精算課税を適用する際のメリット・デメリットを知ってもらった上で、暦年贈与と相続時精算課税の選択基準についてご説明します。
相続時精算課税とは
60歳以上の父母または祖父母などから、18歳以上の子または孫などに対し、財産を贈与した場合に、相続時精算課税を適用すると、贈与した財産の評価額から、基礎控除額110万円を控除した上で、特別控除額として限度額2,500万円までを控除することができます。
前年以前に、例えば1,000万円等、特別控除額の範囲内で控除を受けた場合には、2,500万円から既に控除を受けた1,000万円を差し引いた残額1,500万円が限度額になります。
限度額2,500万円を超えた場合には、一律20%の税率により贈与税が課税されます。相続時精算課税を適用せずに、2,500万円を超えた財産を贈与すると、45%や50%の税率が適用されますので、相続時精算課税により贈与税を抑えることができます。
ただし、相続時精算課税により贈与した財産は、最終的に相続財産に含めて相続税を計算します。相続時精算課税により納付した贈与税は相続税から差し引き、精算することになります。
相続時精算課税を適用する場合には、贈与を受けた年の翌年の2月1日から3月15日までの間に、贈与税の申告に合わせて相続時精算課税選択届出書を提出します。
その際、贈与者と受贈者の関係が直系卑属(子や孫など)であることを確認するために、戸籍謄本を添付する必要があります。
相続時精算課税のメリット・デメリット
相続時精算課税を一度選択すると、暦年贈与に戻ることができないため、メリット・デメリットをよく理解した上で選択する必要があります。
暦年贈与と相続時精算課税の選択基準
暦年贈与と相続時精算課税を選択する基準をこれから述べますが、大切なことは、贈与者の年齢、贈与額、贈与時期によって異なってくるため、実際に贈与税と相続税を合わせて試算し、検討することです。
また、贈与者が複数いる場合には同じ制度を使う必要はありません。父は相続時精算課税、母は暦年贈与といったかたちで分けて利用してもよいので、子供が多いと色々なパターンが考えられます。
暦年贈与を選択した方が良い人
相続までに時間が見込めて、少しずつ着実に贈与していきたい人は、暦年贈与の方が良いと言えます。相続時精算課税は相続財産が多いと、最終的に相続税がかかりますが、暦年贈与は相続税がかかりません。
子供2人に20年にわたって贈与すると4,400万円になり、それなりの金額になります。
ただし、相続開始前の暦年贈与は相続税の対象となるので注意してください。2024年1月1日以降の贈与は、相続開始の前7年以内が相続税の対象となります(2023年12月31日以前の贈与は3年以内)。
人生の早い段階で相続のことを考える人は多くありません。相続間際に慌て、相続人が多額の相続税を払うことのないように、相続財産が多い人は今からでも計画的に相続税対策を進めておきたいところです。
小規模宅地の特例を適用する場合には、暦年贈与を選択することになります。
親子の同居等が条件になりますが、特定居住用宅地として土地を相続した場合には、330㎡を限度として土地の評価額を80%減額まで減額することができます。また、賃貸している収益不動産は、貸付事業用宅地として土地を相続すると、200㎡を限度として土地の評価額を50%減額することができます。
小規模宅地の特例は、相続時精算課税を選択すると適用することができなくなるので、注意が必要です。
相続時精算課税を選択した方が良い人
まとまった財産があり、すぐにでも贈与したい人は、相続時精算課税を選択すると良いとされています。相続財産が相続税の基礎控除額で納まる等、相続税がかからないことがわかっていれば、相続時精算課税により前もって贈与しておくのも選択肢の一つです。先行して子供に住宅取得や起業等のために、まとまったお金が必要であれば、相続時精算課税を利用して贈与することができます。
相続時精算課税を適用した場合でも、住宅取得等資金の贈与、教育資金、結婚・子育て資金の一括贈与の非課税制度を併用することができます。
住宅取得等資金は1,000万円(省エネ住宅の場合)まで非課税で贈与を受けることができます。相続時精算課税で適用される基礎控除額110万円を合わせると、住宅取得費用として3,610万円が非課税になります。
相続時精算課税と相性が良いのは不動産です。
特に、不動産賃貸をしている収益不動産を持っている方で、相続時精算課税を選択している方は少なくありません。早い段階で不動産を贈与すると、贈与時の評価額で相続税を計算することになるため、時価が上がった場合には含み益に課税されません。更に、収益不動産から得られる家賃収入は子供の帰属となり、次世代に所得移転を図ることができます。
相続までに時間がないと見込まれる人は、相続時精算課税を選択することによって、毎年110万円の基礎控除が適用されます。相続開始の前7年以内であっても暦年贈与と異なり、相続財産に含める必要がありません。
監修者プロフィール
川口 誠(カワグチ マコト)
国税局では高度な調査力が必要とされる調査部において、10年以上にわたって上場企業や外国法人等の税務調査に従事する。また、国税庁においては、全国の国税局にある調査部の監理・監督を行い、国税組織の事務運営にも携わる。
略歴
平成24~28年 東京国税局 調査第四部各調査部門、調査第一部調査管理課
平成29~30年 国税庁 調査査察部 調査課
令和元~5年 東京国税局 調査第一部 国際調査課、国際調査管理課、広域情報管理課
令和6年 ON税理士法人と業務提携
実績
中小企業から上場企業等まで100以上の会社の税務調査を行う。
メディア・著書
「元国税の不動産専門税理士が教える!不動産投資 節税の教科書」
資格・免許
税理士
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