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2024.12.26 税務コラム

消費税のインボイス制度に登録すべき?すべきでない?/税務コラム〜[vol.008]

消費税のインボイス制度に登録すべき?すべきでない?

2023年10月1日に消費税のインボイス制度が導入され、1年が経過しました。これから事業を始められる方はもとより、今でも免税事業者で適格請求書発行事業者として登録すべきかどうか悩まれている方もいらっしゃると思います。
この記事では、インボイス制度の基本的な概要・経過措置を確認し、メリット・デメリットを踏まえた上で、どうすべきかについて記載していますので、参考にしてみてください。

CONTENTS

消費税のインボイス制度と特例措置

消費税の基本的な仕組みとしては、売上等の預かった消費税から仕入・経費等の支払った消費税を差し引き、納めることになっています。仕入・経費等の支払った消費税を差し引くことを仕入税額控除と言います。


消費税のインボイス制度は新しい仕入税額控除の方式で、正式名称は適格請求書等保存方式と呼ばれます。税務署に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出して、適格請求書発行事業者として登録を受けます。登録を受けた事業者は、登録番号を記載した適格請求書(インボイス)を発行することができます。インボイスを受け取った取引先において仕入税額控除を受けるという流れになっています。


消費税が課税される売上(課税売上)が1,000万円以下の小規模な免税事業者については、消費税を納める必要がありません。そのため、免税事業者が適格請求書発行事業者として登録を受け、課税事業者になった場合でも、税負担や事務負担を考慮し、納税額を売上等の預かった消費税の2割に軽減する措置、いわゆる「2割特例」が3年間講じられています。


また、本来であれば、適格請求書発行事業者として登録されていない免税事業者に対して仕入・経費等の消費税を支払った場合でも、仕入税額控除の適用を受けることができませんが、6年間は一定割合を控除することができる経過措置が設けられています。「80%控除対象」と呼ばれます。


・令和5年10月1日から令和8年9月30日までの3年間は、仕入税額控除の80%相当


・令和8年10月1日から令和11年9月30日までの3年間は、仕入税額控除の50%相当


消費税のインボイス制度に懐疑的な意見も

売上等の消費税を預かっているのであれば、仕入・経費等の支払った消費税を差し引き、消費税を納めることは、本来の消費税の仕組みに沿っていると言えます。消費税を一方的に預かっていると、そこには消費税がたまり、いわゆる益税が発生することになります。そこで、インボイス制度によって益税をなくすという狙いがあります。ただ、益税を根拠として適格請求発行事業者に登録すべきだとすると、簡易課税制度による業種ごとのみなし仕入率の適用によっても、少なからず益税が生じているわけで、簡易課税制度はそのままでよいのかといった疑問が生じ得ます。


また、課税売上が1,000万円以下の事業者については、納税者の事務負担や税務行政の執行コストの軽減から消費税の納税義務を免除しています。そこに課税をするということは、納税義務の免除の趣旨と反対のことをしているのではないかといった意見もあります。


消費税のインボイス制度のメリット・デメリット

適格請求書発行事業者として登録した場合のメリット・デメリットを整理すると以下の通りになります。


消費税のインボイス制度のメリット・デメリット


結局、登録すべき?登録すべきでない?

課税売上が1,000万円を超えるような課税事業者は、適格請求書発行事業者として登録することになろうかと思いますが、1,000万円以下の小規模な免税事業者はどうすべきでしょうか。


まずは、ご自身が受け取っている売上に消費税がかかっているかどうかを確認します。例えば、居住用物件の賃貸業や医療・介護業務等を行っていると、売上には消費税が課税されておらず、預かっている消費税がないので、適格請求発行事業者として登録しなくてよいと言えます。


それ以外の業務を行い、売上に消費税が課税されている方はどうでしょうか。そのような方は、まずは、適格請求発行事業者として登録しない場合に、得意先との取引に支障が出るかどうかを確認します。登録しない場合には、上記の経過措置で確認した通り、得意先は仕入税額控除に80%控除対象の制限がかかります。得意先の立場で考えると、同じような取引先、取引条件等であれば、適格請求発行事業者の方を選ぶかもしれません。


ただ逆を考えると、適格請求発行事業者として登録しない場合であっても、取引先は仕入税額控除に80%控除対象の適用が受けられるので問題ないと言ってくれるかもしれません。その対応を確認すると良いでしょう。80%控除対象も経過措置であり、今後どうなるかはわかりませんし、消費税の納税義務が生じることを考えると、とりあえず適格請求発行事業者として登録せずに、当面は様子を見た方が良いとも言えます。


一度、免税事業者が適格請求発行事業者として登録して課税事業者になると、2年間は納税義務が免除されず、消費税を申告する必要がありますし、インボイスの発行・管理に係る経理業務を行うことを認識しておかなくてはいけません。いわゆる「2年縛り」です。もっとも、今、免税事業者が適格請求発行事業者として登録して課税事業者になると、上記の経過措置で確認した通り、売上等の預かった消費税の2割で納める消費税が済みます。


川口 誠(カワグチ マコト)

監修者プロフィール

川口 誠(カワグチ マコト)

国税局では高度な調査力が必要とされる調査部において、10年以上にわたって上場企業や外国法人等の税務調査に従事する。また、国税庁においては、全国の国税局にある調査部の監理・監督を行い、国税組織の事務運営にも携わる。

略歴
平成24~28年 東京国税局 調査第四部各調査部門、調査第一部調査管理課
平成29~30年 国税庁 調査査察部 調査課
令和元~5年 東京国税局 調査第一部 国際調査課、国際調査管理課、広域情報管理課
令和6年 ON税理士法人と業務提携

実績
中小企業から上場企業等まで100以上の会社の税務調査を行う。

メディア・著書
「元国税の不動産専門税理士が教える!不動産投資 節税の教科書」

資格・免許
税理士

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