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2025.01.20 税務コラム

相続税の節税対策は暦年贈与からスタート /税務コラム〜[vol.009]

暦年贈与

暦年贈与がなくなるという話がありますが、昨年12月に決定された税制改正大綱には暦年贈与廃止の内容は入っておらず、今後検討するなどの記載もありませんでした。しかし、政府は相続税と贈与税の一体化という方針を掲げています。今のうちに暦年贈与を利用し相続税対策をしておきましょう。

CONTENTS

暦年贈与とは

1月1日から12月31日までの1年間に子供などに110万円以下のお金などを贈与しても、贈与税がかかりません。これには通常必要とされる生活費や教育費は含まれません。非課税枠110万円は受取側の人数で考えますので、子供が2人いると、それぞれ110万円で合計220万円になります。10年にわたって贈与すると、2,200万円とそれなりの金額になります。暦年贈与は最初に始めるべき相続税対策と言えます。


暦年贈与ではなく、相続時精算課税制度を利用した方が有効な場合もあります。どちらを選択すべきかについて詳しくはこちらのコラムをご覧ください。


暦年贈与と相続時精算課税、相続税を見据えどっちを選択?/税務コラム〜[vol.006]


相続時精算課税制度を選択した場合には、暦年贈与に戻ることができませんので注意してください。


上場株式による暦年贈与という方法もある

暦年贈与の非課税枠110万円を使って、お金ではなく上場株式を子供に贈与することもできます。今後価格の上昇が見込まれるような株式は、相続財産に含める必要がありませんので、相続税対策として有効です。更に、不動産と異なり一株当たりの金額が低く、非課税枠110万円を意識して利用することができるのも良い点です。


上場株式を贈与した場合、以下の4つの中から最も低い価格を評価額として選択することになります。前月、前々月の評価額は確定していますので、株価が上昇局面では計画的に低い価格で贈与することができます。


●贈与の日の終値


●贈与した月の毎日の終値平均


●贈与した前月の毎日の終値平均


●贈与した前々月の毎日の終値平均


また、株主優待の利益をより多く享受することができる場合があります。一定の株式保有数を超えると、受けられる株主優待は変わらなくなりますが、株式を子供に贈与することによって家族として株主優待をより多く受けることができます。銘柄によっては、多く受けられないことがありますので、事前に確認してみてください。


手続きの注意点としては、同じ銘柄の株式を特定口座から子供の特定口座に移管する場合には1回限りになるということです。2回目以降は一般口座に移管することになり、配当金の源泉徴収がされず、確定申告を自身で行う必要があります。


株式贈与契約書、移管依頼書等の必要書類も含めて、詳細は証券会社に確認してみてください。


暦年贈与の注意点

1.令和6年1月1日より相続財産に加算する生前贈与が相続時前3年以内から7年以内に順次拡大することから、贈与者が若いうちに暦年贈与をした方が良いということになります。ただし、法定相続人以外は除かれますので、孫などに贈与すると回避することができます。


2.何年間にわたって非課税枠110万円の範囲内で、例えば10年にわたって100万円を贈与することを事前に決めていたとみなされると、定期贈与、連年贈与として総額である1,000万円に贈与税が課税される可能性があります。金額を固定せず不定期に贈与した方が良いと言えます。


3.親から子供に贈与する場合に問題となるのは、実際は贈与しておらず、名義預金として相続時に相続財産として課税されることです。名義預金は相続税の税務調査でも論点になることが多く、そうならないためにも次章に記載した対策が必要になってきます。


暦年贈与で名義預金とされないための対策

贈与契約書を作成


税務署と後々トラブルにならないように、口頭ではなく必ず契約書を作成して残しておきます。


親と子供が贈与契約を締結した旨を記載し、両者が署名をします。その際は、お金であれば金額を記載し、親が贈与することについて子供が了承した旨を付け加えておきます。また、子供が指定する金融機関の口座に親が振り込むことも併せて記載しておきます。


金融機関を通して贈与する


現金の受け渡しではなく、必ず子供名義の金融機関の口座を作った上で、親の口座から子供の口座に振り込むようにしましょう。贈与契約は当事者間になりますが、金融機関を通すことによって客観的な証拠を残すことができます。


最近では金融機関に口座を作成する場合でも印鑑は不要になりましたが、都市銀行の店頭で口座を作成する場合には印鑑が必要ですので、そのときは、親が使用している印鑑を使わないようにしましょう。


受贈者側で口座管理を行う


贈与した後に子供が金融機関の通帳やカードを管理しておくことも大切です。


子供が未成年者の場合はそもそも管理することができないと思われるかもしれません。その場合は暦年贈与が認められないのでしょうか。そんなことはありません。民法では親権者が同意することによって贈与契約が成立することになりますので、贈与契約書に親権者として署名を行います。お金の受取りを認識することができるようになってから子供に説明します。それまで親はご自身の通帳やカードと別に管理しておきましょう。


贈与税の申告


110万円を超えた金額を贈与し、贈与税の申告・納税を行うことによって、贈与したという実績を残しておくということも方法の一つです。ただし、その贈与税の申告をもって贈与が名義預金として認められたわけではありませんので、無理に贈与税を払ってまでして行う対策とは言えません。税務署は申告・納税の有無で名義預金かどうかを判断しません。それよりも大切なことは実質的に贈与されているかどうかです。


川口 誠(カワグチ マコト)

監修者プロフィール

川口 誠(カワグチ マコト)

国税局では高度な調査力が必要とされる調査部において、10年以上にわたって上場企業や外国法人等の税務調査に従事する。また、国税庁においては、全国の国税局にある調査部の監理・監督を行い、国税組織の事務運営にも携わる。

略歴
平成24~28年 東京国税局 調査第四部各調査部門、調査第一部調査管理課
平成29~30年 国税庁 調査査察部 調査課
令和元~5年 東京国税局 調査第一部 国際調査課、国際調査管理課、広域情報管理課
令和6年 ON税理士法人と業務提携

実績
中小企業から上場企業等まで100以上の会社の税務調査を行う。

メディア・著書
「元国税の不動産専門税理士が教える!不動産投資 節税の教科書」

資格・免許
税理士

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